2025.11.27
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山口産業株式会社は、これまでの膜構造建築で培った技術と経験を活かしつつ、少し先の未来を見据えたオープンイノベーションを担うプロジェクトとして「MEMBRANE LAB.(メンブレンラボ)」を運営しています。

MEMBRANE LAB.は、「WRAP THE FUTURE」というビジョンを掲げ、社外のクリエイターや異業種と協働し、社会や顧客の課題解決に挑む共創ラボであり、実験の場です。
この活動は、環境に配慮した製品づくりで次世代につなげる仕事、地域と共に育ち地域に誇れる会社であること、そしてお客様の期待を超える製品・サービスを提供するというMISION(使命)に基づき進行しており、建築という枠にとらわれずに様々なプロジェクトに挑戦しています。

活動の根底には、膜構造が持つ軽量性、短納期、意匠性、光や紫外線のコントロール、大空間をつくれる、空間形成の自由度といった独自の特長(可能性のシーズ)が活かされています。
メンブレンラボでは、膜構造の持つ特性を最大限に生かし、以下のような共同開発プロジェクトに取り組んでいます。

HütTENTは、登山時の避難小屋や防災拠点として設計された山小屋で、施工や運搬が困難な場所でも設置可能な外寸約3.5m✕3.5mのサイズです。このプロジェクトの最大の特徴は、木の循環と膜のメリットを活かしたサスティナブルな小屋である点です。
従来の木造建築物で大量に発生していた解体時の廃棄物を、スクエアパネル工法を活用することで大幅に削減することが可能になりました。
また、この構造は解体して移築が可能であり、廃棄後もパレット等にリユースできます。膜素材を使用することで機能性や意匠性を高め、一般の木製小屋よりも長期間の使用が可能となりました。
膜は透過性により光り、グラフィックの印刷やカスタムも可能です。


竹のパビリオンは、薩摩川内市の循環型経済産業都市構想「Satsuma Future Commons」の一環として、地域資源を活用した循環型竹建築のデータ収集を目的としたプロトタイプ(試作)として建設されました。

ベーシックな柱梁構造を竹でつくる試みであり、単純な構造形式と膜形状を組み合わせることで、「軽量性」と「柔軟性」という双方の特性を親和させています。小学生の総合学習の場として活用され、サーキュラーデザインを学ぶ機会を提供しました。

熊本県南小国町の収穫祭で、地場材の小国杉を用いた仮設テントを制作し、資源循環と再利用をコンセプトとして追求しました。このプロジェクトは、「誰でもつくれる」「繰り返し使える」地場材の木造建築を実現しています。


構造材には小国杉の端材やストック材を借用し、釘やビスを使わない可逆的なジョイント「つな木」で接続することで、祭りの後に木材工場に返却・再利用されるリバーシブルデザインを実現しました。

テント膜は立体裁断され、地産材の割竹で張力を導入し、「つな木」のボルト穴を利用して簡便に取り外し可能なディテールが開発されました。

このプロジェクトは、鹿児島県のシャッター温泉街にある築50年の空き家を改修する実証実験として行われました。膜素材と古民家を組み合わせることで、従来の半分のコストで一棟貸しのゲストハウス化を目指しています。空き家改修の課題である断熱と外壁改修を膜素材で低コストに解決するため、内装には木のフレームに2層(もしくは3層)の膜を組み合わせ、空気層による断熱効果を発揮させます。外装は膜素材で建物を包み込む「ラッピングリノベーション」で景観を向上させています。この膜モジュールは特許取得と量産化、他地方への展開も計画されています。

山口産業が推進する、年間約100トンに及ぶテント膜の廃棄物問題解決を目指す「廃棄ZEROプロジェクト」の一環として実施されました。廃棄されるテント膜の端材をアップサイクルし、「プリーツバッグ」を発表しています。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000100006.html

この発想は、通常の膜構造建築の常識である「素材にテンション(張力)をかけ、ピンと張る」ことを覆し、あえて素材に「ひだ」を作り立体的なデザインを与えるプリーツ加工に挑んだ斬新なものです。

香蘭女子短期大学の学生の自由な発想と、ハイブランドのプリーツ加工を手掛けるオザキプリーツの技術が融合し、建築素材の耐久性とファッションの繊細な美しさが共存するアップサイクル製品が誕生しました。
MEMBRANE LAB.では、製品開発だけでなく、膜の可能性を拡張し、社会課題の解決に資する新たな構想を練るためのワークショップやリサーチを積極的に行っています。

気候変動やコスト高に直面する農業の今と未来について、農業法人代表へのリサーチを通じて課題と解決策を抽出しました。解決策として、膜構造を活用した低コスト農業施設の開発や、砂漠など水不足地域でも可能な農業戦略を構想しています。具体的な技術アイデアとして、幅70m規模の広大な無柱空間の実現、断熱性や耐候性を向上させる多層構造の活用が検討されました。さらに、ジャイロスコープ技術を応用し、災害時に転がる・浮く構造を設計した球体構造が提案されており、これは持続可能な居住空間と栽培環境を両立させ、農業とエネルギーの自給を実現する未来型の都市設計の可能性を秘めています。

膜構造の特性を活かし、都市の課題を解決するアイデアを創出するワークショップが実施されました。ヒートアイランド現象とエネルギー効率化への対応として、膜の軽量性・透明性を利用した大規模な日よけなどで都市の温度上昇を緩和する建築物を構想しました。また、耐久性と柔軟性のある膜を利用した防災テントや災害時の仮設住居の提案や、膜をスチールや木材と掛け合わせ、従来の建築様式を刷新し、都市を「軽くする」新しい建築ソリューションが提案されています。 詳細はコチラ

市場成長が著しい探索領域である畜産・養殖用途について、中央畜産会へインタビューを行うなどリサーチを実施しています。膜構造畜舎は、断熱性・通気性を自在にコントロールできる環境制御型の新しい一次産業インフラとなり得ると構想されており、メタンガスホルダーによるエネルギー循環などを活用した未来の畜産業が追求されています。詳細はコチラ
MEMBRANE LAB.は、地域課題への共同研究や試作品の開発には至っているものの、事業化につながる事例が少ないという課題に直面しています。今後は、「ステージゲート型の事業化プロセスに統合」することで、MVP(最小限の実行可能な製品)開発を通じて、社会課題解決に資する製品の事業化を加速させていく予定です。
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