ニュース|2024.04.16
テント倉庫やスポーツ施設など膜構造建築の総合メーカーである⼭⼝産業株式会社は、新しい視点やアイデアを持つ全国の専門学校、短大、大学、大学院において建築、デザイン、宇宙などを学ぶ学生を対象に「第1回膜構造コンテスト」を開催。「宇宙×膜構造」という制約の強いテーマのなか、エントリー総数49件、応募作品数17件の素晴らしい作品をお寄せいただきました。最終プレゼン審査は3月15日(金)に佐賀新聞社にて開催。厳正なる審査の結果、最優秀賞1点、優秀賞3点を決定いたしました。
詳細は、【膜構造コンテストホームページ】を参照。
https://www.membrane-structure-contest.com/process/grand-prix
コンセプトは、「寄生」です。宇宙での滞在場所として月や火星などが考えられていますが、得られる資源が限られることが懸念点だと感じました。そこで、生物に必要な元素を含む可能性があり、重元素が集まって利用しやすい小惑星に注目しました。「複数の小惑星から資源を採掘し、その資源を用いて居住空間を拡大していく」小惑星に寄生して膨張するような建築です。宇宙だから活用できる技術、地球で応用できる膜材の使い方を考えました。大きくとらえた居住空間と、人々の生活する場として小さくとらえた居住空間の両方に注目することを意識しました。
審査委員長 山口 篤樹(山口産業 代表取締役)
小惑星に寄生して生活し膨張していくという斬新なアイデアに非常に心を惹きつけられました。連結に膜のチューブを使用し通路として利用するという発想も、膜構造の特性を良く理解されていて、実現してみたいと思わせてくれる作品だったと感じています。
審査副委員長 黒木 二三夫(日本文理大学工学部建築学科客員教授 山口産業 設計部技術顧問)
天体間に浮遊する小惑星に寄生し、資源を得ながら個人スペースと共有スペースで構成される「居住空間が膨張する」という独創性が面白かったです。CADの時代に、敢えて手書きでの図面表現による仕上げで、提案している各項目の詳しい説明に一役買っている点にも、工夫が感じられました。
審査委員 新井 康平(佐賀大学名誉教授 西九州大学客員教授、久留米工業大学客員教授)
複数の小惑星の異なる資源を集めて空気砂膜構造を伴う地球外居住区を創造するアイデア、遠心力による重力の創造等評価できる作品に昇華していると感じました。
特別員 佐々島 暁(株式会社日本防災研究所宇宙建築の会 日本建築学会 宇宙居住特別委員会委員)
一見、自由度が高いように見える宇宙と膜構造は多くの課題を抱えるテーマでした。本作品はその課題に対して真っ向から挑み、細部に至るところまで思考を凝らしたアイデアが詰め込まれ、そう言った部分が評価されたと思います。
2018年、火星の地下に大量の液体水が存在する層が発見されました。その水を活用できれば、将来的に人類が火星へ移住する可能性も高まります。そこで私たちは、火星での生活を豊かにするため、『雨を降らせる』という方法を提案いたします。傘状の大空間の中に地下から汲み上げた水を噴射して雨を降らせることで、地球上での生活リズムに近づけ、密閉空間での生活に対するストレスを軽減できると考えました。今回のコンペを通して新たな知見が得ることができ、非常に有意義な経験となりました。また、優秀賞をいただけたことを大変光栄に思います。ありがとうございました。
私たちは地球上の暮らしを再解釈し、都市を結ぶ行商人であるCARAVANSの暮らしを提案します。様々な暮らし方がある現代で、私たちが思考したのは非定住です。CARAVANSの暮らしはモビリティ形式の膜構造建築で営われ、火星という新境地で非定住を実現しています。しかし、不安定な居住だからこそCARAVANSは人間同士の出会いと関係の中で生きることができ、地球上では起こり得ない生活へと拡張していくのではないでしょうか。限られた知識を頼りに宇宙の居住を考えることは容易ではありませんでしたが、試行錯誤を重ねて形にする過程は、私たちの大切な経験となりました。
人類が宇宙で暮らす、その先の未来に必要とされるのは何か。私たちはこの答えを多様性と捉え、多種多様な小惑星利用による多様性社会を提案しました。各小惑星には大膜によって覆われたワーケーション施設や、養老複合施設などが存在し、同じ構造の大膜とスイングバイによる円滑な移動によって社会の中の繋がりを保ちつつも、それぞれ違った重力・地質により多様性を生み出せると考えます。このコンテストを通し、仲間や他の参加者の考えに触れることで、自身にはない新たな視点を数多く得られました。このような貴重な機会に出会えた事、とても嬉しく思っています。ありがとうございました。
今回のテーマとなった『宇宙』という未知のフィールドに対して、応募作品のアイデアはどれも柔軟且つ斬新で私達審査員を驚かせてくれました。また、一つ一つの作品にストーリー性があり、常に変化を続ける宇宙に対して今、膜はどんな課題を解決し、どんな未来を描けるか、様々な物語の中で膜の無限の可能性を感じ、30年以上膜構造に携わってきた私も知らない新しい膜構造の領域を見せていただいたと感じています。今回のコンテストを機会に、応募いただいた方をはじめとした学生の皆様には、膜構造の可能性を様々な場面に応用していただくことを期待すると同時に、ご活躍を祈念いたします。
参加グループ(参加者)全般に関して言えることは、コンテスト参加前までは「膜構造」に関して、専門教育を受けたこともなく、予備知識すら持っていなかったと思われます。更に、その膜構造を宇宙空間や他の惑星で使用するという難しいテーマに対し、募集開始から作品提出までの僅か5か月間という短かな期間でリサーチし、自分達なりの独自の提案を、よくもこれだけの作品に仕上げることができたものだ、と感心させられました。20世紀以来、再び宇宙への期待が高まっている現代においてコンテストのテーマ性から、「地球とは異なる宇宙線下の膜構造はどのようなものが要求されるのか」、「小惑星の活用」、「宇宙デブリの建材への変換」などハード面に加え、「宇宙での社会生活をどのようにとらえるべきか」といったソフト面までの提案がなされ、それこそ「宇宙への夢が膨張する」楽しいコンテストだったと感じます。
今回のコンテストのテーマ「宇宙インフレーション」に相応しく、創造性豊かで甲乙つけがたい作品が多く提案された。エウロパを対象に積層膜構造による源流生成、マリウス丘における竪穴住居に地球環境を作るアイデア、M型小惑星に目を付けた作品、団子串刺し状態やブドウの房状態の膜構造及びその建築物の展開法、膜構造の素材の工夫、水循環の考慮、傘構造の中に雨を降らせるという発想、小惑星間をつなぐとの発想、スペースデブリを資材とする考え、火星におけるごみ処理を対象にする発想、ストーリー性、コンセプトに富むアイデア等が優れているものが多く見られた。
今回のコンテストに作品を応募された皆様、お疲れ様でした。そして受賞された皆様、おめでとうございます。テーマである「宇宙×膜構造建築」は、他の建築のデザインコンペと比較してかなり難しいテーマだったのではないでしょうか。人が生きるためには条件が多すぎる宇宙空間で、如何に膜構造を活かした提案をするか。そして、平面では表すのが難しい膜構造を説得力のあるビジュアルで表現する難しさは尋常ではなかったのではないでしょうか。そんな難しいテーマにチャレンジし、作品として完成させた応募作品全てに敬意を表したいと思います。
山口産業では、異業種との協業で社会課題に挑戦するプロジェクト「MEMBRANE LAB.」を立ち上げています。
当社が50年以上の歴史の中で培ってきた技術と経験に異業種の知⾒を掛け合わせることで、災害、農業、都市における課題など、様々な課題を解決していくことを⽬指してきました。
【MEMBRANE LAB. 公式ページ】 https://membry.jp/membrane-lab/
今回は「宇宙」というフィールドでの課題解決に向けた一歩を踏み出すべく、未来のパートナーとなる可能性を秘めている学生からのアイデアを募集させていただきました。
山口産業では、今後も様々なフィールドでの課題解決をテーマとした膜構造コンテストを開催していく予定です。全国の学生に膜構造に触れてもらい、膜の可能性を無限大のフィールドで拡張していくことを目指していきます。
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