2025.12.24
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多雪地域で倉庫の新設や増設を検討する際、「テント倉庫は雪に耐えられるのか」と不安を感じる声はよく聞かれます。
雪の重みで屋根が変形したり、開口部から雪が吹き込んだりと、積雪が原因で倉庫設備にトラブルが生じた経験をお持ちの方もいるかもしれません。そのため、テント倉庫は多雪地域には向かない印象を持たれがちです。
一方で近年では、積雪荷重を前提とした設計を行うことで、多雪地域にも対応できる積雪仕様のテント倉庫が登場しています。北海道をはじめ、青森など東北の積雪地域でも、想定積雪深に合わせた構造設計によって対応可能です(条件により要相談)。
本記事では、積雪テント倉庫の事例を持つメーカーの視点から見た特徴、設計上のポイントをご紹介し、あわせて多雪地域での施工事例まで解説します。雪の影響を考慮したテント倉庫を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

テント倉庫とは、鉄骨の骨組みをシート状の膜材で覆い、屋根や壁を構成した建築物です。シート倉庫やテントハウスと呼ばれることもあります。
簡易的な設備という印象を持たれがちですが、テント倉庫は法律上「建築物」に位置付けられています。構造や安全性に関する基準は、国土交通省告示第667号によって定められており、一定の条件を満たすことで長期的な使用も可能です。
また、積雪の多い地域では、雪の重さを考慮した設計が求められます。
建築基準法では積雪荷重をより厳しく考慮すべき地域が指定されており、この条件に対応した仕様として「積雪テント倉庫」が用意されています。
積雪テント倉庫は、屋根形状や構造部材を工夫することで、雪の影響を受けにくい設計が施されています。そのため、多雪地域であっても、適切な仕様を選択すればテント倉庫を建設することは可能です。
近年は気候変動の影響により、短時間に大量の雪が降るいわゆる「ドカ雪」が発生しやすくなっています。こうした状況を踏まえると、多雪地域では積雪を前提とした倉庫設計がより重要だといえるでしょう。
積雪テント倉庫とは、雪の重さや吹き込みといった多雪地域特有のリスクを想定し、構造や設計を強化したテント倉庫です。
積雪テント倉庫を理解するためには、屋根形状、構造部材、生地の強度、周辺スペースという4つの特徴を押さえると分かりやすいです。一つずつ解説します。
積雪テント倉庫では、屋根に十分な傾斜を持たせることが重要です。
これは、テント倉庫では基本的に人手による雪かきを行わない前提で設計されているためです。
屋根が平らな構造の場合、雪が滞留しやすくなり、積雪の重みによって屋根の変形や、最悪の場合は建物全体の倒壊につながるおそれがあります。そのため、積雪テント倉庫では、雪が自然に滑り落ちるよう屋根に傾斜をつけた設計が採用されています。
一般的なテント倉庫と比べると、積雪テント倉庫の屋根勾配はおおよそ1.5~2倍程度に設定されるケースが多く見られます。これにより、屋根に雪が溜まりにくくなり、積雪による荷重を軽減する効果が期待できます。
屋根の傾斜は積雪対策の基本要素であり、多雪地域でテント倉庫を建設するうえで欠かせない設計ポイントの一つです。
二つめの特徴は、雪の重さに耐えられるよう設計された強度の高い柱と生地構造です。積雪テント倉庫は、積雪荷重に耐えられるよう、一般的なテント倉庫よりも強度の高い柱や膜材が採用されています。
積雪量は地域ごとに「垂直積雪量」として定められており、この数値をもとに想定される積雪荷重が決まります。そのため、積雪テント倉庫では設置場所の条件に応じて、柱や構造部材の強度が調整されます。屋根を支える柱の本数を増やすなど、構造面での工夫が施される点も特徴です。
また、屋根や壁に使用する膜材には、引張強度や耐久性に優れたものが選定されます。構造と素材の両面から強度を高めることで、雪による変形や破損のリスクを抑えています。
屋根や構造に着目されることが多いのですが、積雪テント倉庫の場合、開口部の設計にも配慮が必要です。出入口は雪や風の影響を受けやすく、使い方次第で作業性や安全性に差が出るためです。
例えば、雪が吹き込みやすい風向きを避けて開口部の位置を決めたり、倉庫内の動線を踏まえて出入口を配置したりといった工夫が行われます。これにより、降雪時でも出入りしやすい環境を保つことができます。
また、引き戸を採用したり、開口部にカーテンや霧除けを設置したりすることで、雪の吹き込みや冷気の侵入を抑える対策も取られます。開口部の仕様は用途や立地条件によってさまざまですが、多雪地域ではこの点を踏まえた設計がポイントです。
積雪テント倉庫では、屋根から落ちた雪を処理できるよう、建物まわりに十分なスペースを確保した設計が行われます。これは、積雪対策として重視しておきたい特徴の一つです。
屋根に傾斜を設けたテント倉庫では、雪が自然に落下します。そのため、落雪する位置が通路や作業スペースと重ならないよう、建物の配置や周辺環境まで設計する必要があります。雪が溜まりやすい場所に動線が重なると、除雪作業の負担が大きくなってしまいます。
あらかじめ雪かきができるスペースを確保しておくことで、降雪時の作業性や安全性を保ちやすくなります。積雪テント倉庫では、こうした日常的な運用まで見据えた設計が重視されています。
積雪テント倉庫を検討する際は、仕様や理論だけでなく、実際にどのような条件で建てられているかを確認することが重要です。施工事例を見ることで、想定されている積雪量や立地条件、採用されている構造や開口部の工夫などを具体的に把握できます。
ここでは、北海道の積雪140cm想定の事例を含む、積雪テント倉庫の施工例を通して、雪への対応方法や設計の考え方をご紹介します。青森など東北エリアで検討する際にも、条件整理の参考になるポイントを解説します。
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北海道の多雪地域において、農業機械の保管用途として積雪140cmを想定したテント倉庫を施工しました。
積雪荷重を考慮した構造設計を行い、必要な強度を確保しつつ、建物規模を調整することでコスト面にも配慮しています。多雪地域でも長期使用を前提とした計画が可能な事例です。
詳しくは「多雪地域(北海道)のテント倉庫」を参考にしてください。

多雪地域で果物の加工作業を行う工場として、テント倉庫を施工した事例です。
積雪荷重を考慮し、下地鉄骨を増やすことで構造を補強しています。また、透光性のある天井膜材を採用することで、日中は自然光を取り込み、作業に必要な明るさを確保しました。
多雪地域でも作業性と安全性を両立した設計が特徴です。
詳細は「多雪区域に、屋根勾配を考慮したテント倉庫」に掲載しています。

長尺物の出入庫が多い現場に対応するため、妻面をフルオープンできるカーテン式の開口部を採用した事例です。
開口部まわりには霧除けを設置し、吹雪や濃霧時でも倉庫内への雪の吹き込みを抑える工夫が施されています。広い開口部と積雪対策を両立した設計です。
詳しくは「多雪地域のテント倉庫新築」を参考にしてください。

積雪による雪害で既存テント倉庫の雨樋が破損したため、耐久性の高い金属製の雨樋へ交換した事例です。
積雪に耐えうる仕様とすることで、雪による破損や雨だれの発生を抑えています。
多雪地域では、テント倉庫本体だけでなく、雨樋などの付帯設備についても雪への対策が求められます。
詳しい施工事例は「積雪対策工事(雨樋交換+雪止め設置)」こちらにまとめています。
積雪の多い地域では、どれだけ対策を講じていても、想定を超える雪によってテント倉庫が破損してしまう可能性はゼロではありません。万一の事態に備え、対応の流れをあらかじめ把握しておくことが大切です。
まずは安全を最優先に考え、倉庫内への立ち入りは慎重に行いましょう。
倒壊や落下のおそれがある場合は無理に作業せず、被害状況をスマートフォンなどで複数の角度から記録します。あわせて、これ以上被害が広がりそうな箇所や、保管物が濡れそうな部分については、可能な範囲で応急的な対応を行いましょう。
被害状況を確認したら、保険会社への連絡と並行して、テント倉庫の施工・修理を行う業者にも早めに相談することが重要です。
大雪の後は同じ地域で修理依頼が集中することも多いため、迅速な連絡が復旧までの時間を左右します。
積雪テント倉庫について、よく寄せられる質問を以下にまとめました。
不要です。原則として雪下ろしは想定されていません。
積雪テント倉庫は、屋根の傾斜や構造により雪が自然に落ちる設計が基本です。ただし、想定を超える積雪時には、安全確認を行う必要があります。
サイズや積雪条件、仕様によって異なります。
積雪対策として構造を強化するため、一般的なテント倉庫より費用が上がる場合があります。正確な金額は条件に応じた見積もりが必要です。詳しく知りたい場合は、まずはご相談ください。
用途や環境に応じたオプションを選択できます。
シャッターやカーテン、換気設備、透光性膜材などがあり、使用目的や立地条件によって最適な仕様が異なります。詳細は事前の相談がおすすめです。
テント倉庫は、積雪荷重を前提とした設計や構造を採用することで、多雪地域でも建設・運用が可能です。屋根形状や柱・膜材の強度、開口部や周辺スペースの設計によって、雪の影響を抑えた計画が行われています。
積雪条件や用途によって最適な仕様は異なるため、検討の際は実績や対応力のあるメーカーに相談しましょう。
積雪テント倉庫をご検討の方は、多雪地域への施工実績が豊富な山口産業までお気軽にご相談ください。要望にあわせた最適なテント設計をご提案いたします。
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