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PROJECT

世界の農業を
救え。

Q. 近年の大規模自然災害をはじめ、多くの難題を抱える農業界。
食の問題にも直結する農業の社会課題を、膜構造で救えるか?

現代社会に数多く存在する社会課題から、山口産業は何に取り組むべきか。KANDO 田崎氏によるワークショップを通して、まずは「農業」を選択しました。SDGs(持続可能な開発目標)が採択された2015年の国連サミット。このとき国連は「今後地球上の露地栽培で、人類が消費するカロリーを賄えるのもあと10年」という趣旨の発表も行いました。それは人口増加や気候変動によるひとつの予測ですが、2019年の台風による国内の農業被害総額が4,000億円を超えたということも、ひとつの事実として見逃せません。

そういった気候変動の影響が大きい一方で、人口増加に伴う食料自給率の低下、そして就農者の高齢化も進んでいます。農業の必要性はこれまで以上に高まっていく傾向にあるにも関わらず、自然の脅威に敵わず長く農業に携わってきた人々も離れていかざるを得ない現状を打開できないか。今後地球の多くの地域で干ばつ地帯になるか、豪雨地帯になるかの二極化が進むと言われている中、どのような栽培環境を整えていく必要があるのか。農業が盛んな佐賀県に本社を置く私たちも身近に感じることのできる社会課題です。
この問題に対して膜構造が創造できる農業の未来を、先端農業に取り組み、世界から注目を集めるCULTIVERA代表の豊永翔平氏と共に考えてみました。風速70m/s(理論値)に耐える膜構造建築を可能にする山口産業なら、長い間技術的に大きな進歩がないと言われるビニールハウス、そして大規模な農業施設を鮮やかに刷新していけるはずです。

1."File:Flood eroded road and collapsed guardrails in Asakura.jpg" by Hajime NAKANO on Flickr is licensed under CC BY 2.0 2."File:Flood falled down trees near Haki IC of Oita Expressway in July 12.jpg" by Hajime NAKANO on Flickr is licensed under CC BY 2.0 5."File:Red sand dune in Namibia.jpg" by Uploaded on October 1, 2006 by :::Rui Ornelas::: is licensed under CC BY 2.0 https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/ 3."File:DirkvdM santa fe scorched-crop.jpg" by DirkvdM is licensed under CC BY 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/ 4.Photo by NASA

Research

農業の今と未来について、次世代を担うイノベーターから知見を得る。

現在私は三重県で「POMONA FARM」という農業法人を運営し、同時に「CURTIVERA」という会社も立ち上げ、農業の技術開発に取り組んでいます。そんな私から見ても、現在の農業界は日本も世界もかなり切迫しています。気候変動や異常気象によって、おそらく今後5年以内に露地栽培は今のやり方が通用しなくなり、施設園芸も10年ほどしか猶予がない時代になる。農業は、結局自然とどう向き合っていくかということでもあるのですが、近年では露地栽培・ハウス栽培に加え、企業による植物工場も増えはじめました。それもやはり、気候変動の影響を受けにくく、効率的に育てやすいというメリットがあるからです。気候変動による影響の大きさの比率は、露地:ハウス:植物工場でいうと、1000:100:1くらいでしょうか。つまり、植物工場の需要は今後ますます高まることは明らかで、それは膜構造を扱う山口産業にとってのチャンスになるはずです。

今、私自身が取り組んでいる農業技術の研究も膜構造の利用を想定しています。これまでの水耕栽培は、実は多くが赤字でした。それは植物に「ゆとり教育」をさせていたからなんです。最近の若い人がすぐに会社を辞めてしまうように、徒長成長といって、収穫して出荷するとすぐにダメになってしまう。植物の内部組織がきちんと育たず、形だけ大きくなっていくケースが非常に多かったんですね。さらに大量の水と電気も使い、実はサステナブルではない。世界の多くの地域では、水を使いすぎることを理由に禁止されているところもあるほどです。そこで私たちは、湿度管理で栽培する方法を研究開発しています。簡単に言えば、5mmくらいの繊維層で自然の土を再現するような農業技術です。水を湿度に変えることで、植物に負荷をかけながら育て、使う水の量も10 分の1で済みます。水が豊富でない土地でもその繊維層のシートを広げれば農業用地になる。「水も土も使わず栽培する」という農業システムを、膜構造で覆ってもらう。そういう仕組みです。今トライしているのはレタスやトマト、いちごや根菜類などで、設備費用も水耕栽培の半分もしくは1/3くらいでできるようになってきました。低コスト化を実現することで、若い世代も参入しやすくなる。それはとても大切なことなのです。

図)地下からの蒸散水と雨水を活用することで、水資源の少ない地域でも農業を可能にする革新的なシステム。

写真)高密度繊維の上で栽培される植物。湿度をコントロールすることで、しっかりとした根を下ろすそうです。水の使用量は最大で従来の10分の1。排液も出ないことから水処理システムも不要で、低コストも実現した次世代型の農業技術。

写真)ダブルベッド方式で栽培されるフルーツトマト。水分ストレスを活用し、高糖度化を実現している。

他にも、どんな環境でも農業ができる新しい密閉型の栽培施設をつくっていきたいと考えています。まだ構想段階ですが、砂漠の上に構造体をつくり、地下水脈から土中を通して集めた蒸散水を結露させて水を回収する、といった仕組み。雨水も活用することで、ある程度の量の水を確保できるようになります。ただこういった話を既存のビニールハウスメーカーにしてもコストの話にしかなりませんし、実現に向けたポジティブな意見も出てきません。長年同じような企業体質でやってきたところは、なかなか新しいことに挑戦してくれないんですね。そういう意味でも、山口産業は家畜舎などにも挑戦されているので、私はとても可能性を感じています。私たちが考えていることを山口産業と共にパッケージ化していくことができれば、国内どころか世界から引く手数多。現代は、これまで農業と関係ないと思っていた企業ですら農業に取り組むような時代です。今後は大企業が大規模農業施設を整え、新規就農者に貸し出す。

そんな不動産型の農業スタイルがきっと増えていきます。つまり、革新的な農業技術は大きな企業が買ってくれるということです。そして、そこに新規就農者がやってくる。それが、これからの農業のビジネスモデルです。
確かに今後は農家の数そのものは減っていくけれど、反比例的に一人当たりの農地面積は何十倍にもなっていくと思います。それぞれがある程度の規模を持つようになっていくとき必要になるのが新しい技術とシステムです。マーケットそのものが小さくなることは決してないので、ここ数年で必ず大きな変化が訪れます。こうやって山口産業と出会えた幸運に感謝しつつ、一緒に新しいことに挑戦できれば嬉しいですし、何よりも日本と世界の未来に大きく貢献できるはずです。今や食べ物をもっと効率的に、そして確実につくらないといけないということは、世界のみんなが抱えている共通の課題なのですから。

先端農業の技術開発は、露地栽培ではなく施設園芸が前提になっていく。

Searching New Possibilities.Development

食住一体を叶える膜構造建築の可能性を探る。

ワークショップ形式のアイデア会議で、
山口産業と膜構造の新しい可能性に出会う。

KANDO田崎氏とSCAPE塩浦氏を迎えて、山口産業の各部署から集まったスタッフと共に行われたワークショップ。田崎氏の「技術を因数分解して、新しい組み合わせを考える。それが画期的なアイデアにつながる」という言葉の通り、まずは膜構造の可能性を探るために、「幅70mくらいなら柱のない空間をつくれる」「開閉できる蛇腹式もある程度のスケールで可能」「二重膜による断熱性」「木造とのコラボレーション」「移設前提で基礎を代替素材でつくった」など、これまで培ってきたさまざまな技術と経験を抽出していきました。その組み合わせによって生まれたアイデアは、「球体の膜構造建築」というもの。塩浦氏曰く「従来の建築の考え方は、強い基礎が必須。膜構造は基礎から解放されるとイノベーションを起こせます」。球体の膜構造とは、ジャイロスコープ技術を用いて内部を水平に保つことも可能にし、台風に襲われても「転がる」、洪水が起きても「浮く」ことで壊れないという構想。内部空調も完全にコントロールすることで、住居としてだけでなく、農地を確保することだってできそうです。ひと家族の野菜栄養価を葉物野菜で補うために必要な農地面積は約40平米だそうですが、直径10mの球体膜構造をつくれば十分に確保できます。「球体に住むのは人類の夢」と話す塩浦氏をはじめ、参加者全員が活発かつ楽しく議論を重ねることができました。ただしこれは、まだあくまでも構想段階。次はまた違った角度からの専門的知見を取り入れながら、実現性を追求していきたいと山口産業は考えます。そういった技術や知識の統合が新たなイノベーションを生み、未来のスタンダードとなり、街の風景を一変させることを目指して。

ワークショップでは、ある程度の広さを持つ区画に複数の球体膜構造の住宅が集まる新しい都市計画にまで議論が発展しました。台風や水害で流されてしまった際は「人々が協力し合って元の位置に戻す」ということが前提。人の手が介在することで、強いコミュニティ形成にもつながります。

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